託送料金と電気事業者
託送料金は、送配電ネットワークの利用料金のことを指し、小売電気事業者から一般送配電事業者に対して電力量に応じて支払われるものです。小売電気事業者は一般の電気需要(一般家庭、企業、商店等)に向けて、電気を小売していますが、この託送料金を含む費用を電気料金という形で徴収しています。
ここで、電気事業者は以下の3つに大別されます。
事業者 | 役割 |
---|---|
発電事業者 | 発電した電気を小売電気事業者に供給する |
送配電事業者 | 発電事業者から受けた電気を小売電気事業者等に送配電ネットワークを利用し供給する |
小売電気事業者 | 一般の需要(一般家庭、企業、商店等)に対し電気を小売する |
一般配電事業者
送配電事業の種類には「一般送配電事業」の他にも「送電事業」や「特定送配電事業」がありますが、私たちの生活や事業活動に必要な一般的な電気需要との結びつきが強いのは「一般送配電事業」になります。
2023年10月現在、日本の一般送配電事業者は以下の10社であり、経済産業大臣の許可を受けて業務を行っています。
北海道電力ネットワーク
東北電力ネットワーク
東京電力パワーグリッド
中部電力パワーグリッド
北陸電力送配電
関西電力送配電
中国電力ネットワーク
四国電力送配電
九州電力送配電
沖縄電力
託送料金の成り立ち
託送料金は一般送配電事業者が事業者毎に設定していますが、その供給条件や料金について、まとめられ公表されているのが「託送供給等約款」です。そのなかでは接続供給契約に関する要件や電圧・契約毎の託送料金が定められています。
託送料金の内訳
次に託送料金の算定には、具体的にどのような費用が含まれているかを確認していきましょう。
送配電部門の人件費
送配電部門の修繕費
送配電部門の減価償却費
送配電部門の固定資産税
電源開発促進税
賠償負担金
廃炉円滑化負担金
その他
これらの項目を見ていくと、託送料金は電気の送配電に必要な維持運営費用で成り立っていることがわかります。また、これまで一般送配電事業者は、「総括原価方式」に基づいて託送料金を設定していましたが、2023年4月1日以降、新たな託送料金制度となる「レベニューキャップ制度」が導入されました。
託送料金とレベニューキャップ制度
従来の託送料金は総括原価方式に基づき算定されていました。総括原価方式では、電気を安定的に供給するために必要な費用に一定の利益を加えた額(総原価等)と電気料金の収入が等しくなるように料金が設定されます。
この方式によれば、最初から総収入と総括原価が釣り合うように計算されているため、赤字になる心配が少なく、長期的な経営計画が立てやすいというメリットがあります。反対に、総括原価方式は経済メリットを担保する内容となっていることから、電力自由化に係わる制度設計の下では、市場競争を妨げる要因ともされています。
また、一般送配電事業者を取り巻く事業環境は大きく変化しています。日本の電力需要は、高度経済成長期から大幅に伸長し続けてきましたが、近年は人口減少や省エネルギーの進展等により、電力需要の伸長は頭打ちになっています。こうした中、再生可能エネルギーの導入拡大に対応するための送配電ネットワークの増強が必要であることや、激甚化する自然災害に対する安定供給の確保も大きな課題です。
そこで、必要な投資を確保しつつコスト効率化を促すための新制度としてレベニューキャップ制度が導入されました。レベニューキャップ制度の特徴として、コストの効率化、消費者の負担軽減、設備投資の資金確保の3つが挙げられます。これまでの制度の下では、事業者がいくらコスト削減を図っても利益が一定であったことから、コスト削減を行うメリットがそれほどありませんでした。
レベニューキャップ制度の下では、コストが収入上限を下回った場合、利益が全て一般送配電事業者のものとなるため、積極的にコスト削減し利益を増やす努力に繋がりやすくなります。また、その効率化の成果を翌期の収入上限に反映させることで消費者に還元することも可能になります。さらに、事前に想定し得なかった費用増について機動的に収入上限(レベニューキャップ)へ反映することで必要な投資確保が可能となり、事業者の安定的な経営にもつながります。
再生可能エネルギーと託送料金
前述の通り、託送料金は小売電気事業者が電気料金の一部として需要家から費用を徴収し、一般送配電事業者へ支払う費用です。しかしながら、送配電ネットワークを利用しているのは、電気の需要家だけではなく発電事業者も同様です。そこで、小売電気事業者と発電事業者の費用負担を公平にする目的で発電事業者側も託送料金を負担する「発電側課金」の制度が2024年度から導入されることとなっています。
太陽光発電における自己託送
2013年の制度導入で、発電設備の電力を離れた場所に供給することが可能となりました。これにより、電気需要場所の敷地内に太陽光パネルを設置できない場合でも、遠隔地に設置された太陽光発電設備からの電力が利用可能になりました。複数の遠隔地での電力使用やグループ企業間での再生可能エネルギーの使用もできるようになっています。
ただし、自己託送制度を利用するためには「売電目的でないこと」「発電事業者と供給先の事業者が密接な関係であること」といった条件や「計画値同時同量」制度を守る必要もあります。
「密接な関係(資本関係があること等)」については、2021年11月の制度見直しで緩和され、資本関係等がない者について組合を設立し一定の要件を満たすことで密接な関係を持つとみなし自己託送が可能になりました。
まとめ
託送料金は安定した電力確保のために欠かせないコストです。一方で、電気料金において一定の割合を占めていることも事実です。レベニューキャップ制度の導入により、全国的な電気料金の見直し(値上げ)も起きています。引き続き、動向に注目しましょう。