電気料金が設定される仕組み
電気料金は以下の費目の合計にて設定されます。
事業者の裁量で算定される費目
法令等により算定される費目
この方式が採用されたのは、2016年の電力自由化以降です。それ以前は「総括原価方式」が用いられていました。
以下から、それぞれの費目について詳しく見ていきましょう。
事業者の裁量で算定される費目
「事業者の裁量で算定される費目」は、自社電源から調達する場合と他社電源から調達する場合で内容が異なります。いずれかの費用に、人件費やその他の経費を合算したものが設定されます。
自社電源から調達する場合 | ・燃料費・減価償却費・修繕費・その他経費 |
---|---|
他社電源から調達する場合 | 購入電力料 |
【出典】:料金設定の仕組みとは?(経済産業省 資源エネルギー庁HP)
・ 電気料金の三原則
事業者の裁量といっても、電力会社がすべてを自由に設定するわけではありません。基本的には「電気料金の三原則」に基づき電気料金が算定されます。
原価主義の原則:能率的経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものでなければならない
公正報酬の原則:設備投資等の資金調達コストとして、事業の報酬は公正なものでなければならない
電気の使用者に対する公平の原則:電気事業の公益性という特質上、電気の使用者に対する料金は公平でなければならない
法令等により算定される費目
「法令等により算定される費目」にもさまざまな項目がありますが、大きく託送料金・税金・再生可能エネルギー発電促進賦課金の3つに分けられます。
託送料金 | ・送配電部門の人件費、修繕費、減価償却費、固定資産税・電源開発促進税・賠償負担金・廃炉円滑化負担金・その他 |
---|---|
税金 | ・法人税等・消費税等・固定資産税 |
再生可能エネルギー発電促進賦課金 |
託送料金とは
託送料金は、送配電ネットワークの利用料金のことを指し、小売電気事業者から一般送配電事業者に対して電力量に応じて支払われるものです。小売電気事業者は一般の電気需要(一般家庭、企業、商店等)に向けて、電気を小売していますが、この託送料金を含む費用を電気料金という形で徴収しています。
事業者 | 役割 |
---|---|
発電事業者 | 発電した電気を小売電気事業者に供給する |
送配電事業者 | 発電事業者から受けた電気を小売電気事業者等に送配電ネットワークを利用し供給する |
小売電気事業者 | 一般の需要(一般家庭、企業、商店等)に対し電気を小売する |
電気料金の内訳
電気の使用者(以下、消費者)が支払う月々の電気料金は、以下の3つで構成されています。
・ 基本料金
電気を使うための契約に基づく固定料金。この料金は事前に契約した電力によって決まります。
・ 電力量料金
従量料金とも呼ばれ、電気の使用量によって応じて変動する料金です。また、この中には「燃料費調整額」も含まれます。これは、電力会社が発電に使う燃料価格の変動に伴い、その変動を反映させるための料金です。
・ 再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギー(太陽光、風力など)の普及拡大を支えるための料金。固定価格買取制度において再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が買い取る費用に充てられています。
【参考】:再エネ賦課金とは?2023年の急落や固定価格買取制度との関係も解説
【参考】:【法人向け】電気料金を削減するには?電気料金削減の成功事例を紹介
レベニューキャップ制度
2023年4月から始まった「レベニューキャップ制度」は新たな託送料金制度です。電力の安定供給や再生可能エネルギーの導入拡大、デジタル化への投資、経営効率化といった取り組みを両立させながら推進することを目的としています。レベニューキャップ制度では、以下の流れで託送料金の見直しが行われます。
1. 一般送配電事業者が、国の策定する指針に基づき一般送配電事業に係わる事業計画及び投資・費用の見通し(「収入の見通し」)を5か年分策定し、国に提出する
2. 国が「事業計画」及び「収入の見通し」を審査し収入上限を承認する
3. 一般送配電事業者が、収入上限の範囲内で託送料金を設定する
託送料金の見直しは、電気料金において一定の割合を占めるため、消費者の電気料金に直接影響を与える可能性があります。
規制料金プランと自由料金プラン
電気料金には、規制料金と自由料金の2種類があります。消費者は自身のエネルギー消費パターンや予算、リスク許容度に基づいて、これらのプランから最適なものを選択できます。
以下から、それぞれの料金の概要について解説します。
・ 規制料金
規制料金とは、国による認可が必要な電気料金のことを指します。電力自由化以前からある、従来型の料金です。規制料金は大手電力会社が主に提供しており、国による厳しい審査と認可を経て設定されます。そのため、規制料金の変動は比較的安定するのが通常です。燃料費の上昇やその他の経済的要因により、価格が急激に変動することも少なくなります。なお、一般的には従量電灯制などが規制料金プランの一例として挙げられます。
・ 自由料金
自由料金は、電力会社が国の認可を受けることなく、自由に設定できる電気料金です。自由料金の主な特徴は、電力会社が料金プランの内容や単価を自由に設定できる点にあります。電力会社は消費者のニーズに合わせて柔軟に対応できるプランを作成可能であり市場競争を促進できます。
一方、自由料金のもうひとつの特徴は、燃料費調整額の上限設定がないものが多いことです。そのため、燃料価格の上昇や下降により、料金が大きく変動する可能性があります。
このように自由料金には一定のリスクが伴いますが、消費者には多様な選択肢が提供されるというメリットがあります。
大手電力会社による規制料金の大幅値上げ
2023年5月16日に開かれた物価問題に関する閣僚会議にて、日本政府は大手7電力会社からの規制料金値上げの申請を受け入れました。2023年6月の使用分から、平均で15%から39%の値上げが実施されています。
電力会社 | 平均値上げ幅 |
---|---|
北海道電力 | 20.1% |
東北電力 | 21.9% |
東京電力 | 15.3% |
北陸電力 | 39.7% |
中国電力 | 26.1% |
四国電力 | 23.0% |
沖縄電力 | 36.6% |
値上げの理由としては大きく「世界的な資源価格の⾼騰」や「電源構成の変化」、「燃料費調整の上限到達」などが挙げられています。
世界情勢等による電力調達コスト高騰
燃料高騰の理由はさまざまです。具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
脱炭素の促進による化石燃料への投資撤退
為替相場の変動
ロシア・ウクライナ情勢
そもそも、現在の日本は電気の約7割を火力発電でまかなっている状況です。しかし、その燃料はほぼ他国からの輸入によるもの。ロシア・ウクライナ問題と円安ドル高によって燃料コストが高くなれば、卸電力取引市場の価格高騰を招きます。
なお、原子力発電所の停止や、老朽化した火力発電所の廃止などで、国内の電気供給量が減少傾向であることも原因のひとつです。
託送料金の値上げ
2023年4月1日から託送料金についても値上げされました。
前述のとおり、託送料金とは、小売電気事業者が送配電ネットワークを利用するために支払う料金のことを指します。これにより、小売電気事業者は電力を消費者に安全かつ確実に供給することが可能となります。
一方、レベニューキャップ制度とは、一般送配電事業者が5か年毎の「収入の見通し」について国から承認を受け、その範囲で柔軟に託送料金を設定する制度です。この制度の下では、経営効率化によるコスト削減分は一般送配電事業者の利益となります。また効率化成果が翌期収入上限に反映されることで消費者へも還元されます。
・ 値上げの背景は電力需要の傾向・再エネ普及対応・既存設備の更新
今回の託送料金の値上げの背景には、近年の人口減少や省エネの進展により、今後の電力需要が横ばいで推移すると見込まれることや、再生可能エネルギーの導入やデジタル化対応、既存設備の更新などに関する必要コストが年々増加傾向にあることが起因すると言われています。
新電力各社の動き
2016年の電力小売りの全面自由化により新電力が次々と発足し、格安な電気料金を売りにした契約プランも数多く登場しました。しかしながら前述した燃料価格の高騰といった経営環境の悪化を受け、撤退や倒産に追い込まれた会社が相次いだのも事実です。このような状況の中、大手電力会社の規制料金の値上げを受けて新電力各社もその動きに追随している傾向があります。
まとめ
電気料金の高騰は企業にとってリスクのひとつです。この課題に備える方法のひとつとして、自家消費型太陽光発電の導入が挙げられます。電気料金の削減への貢献はもちろんのこと、CO₂排出量の削減としても最適な対策です。電気料金の動向に着目しつつ、太陽光発電の導入をぜひご検討ください。