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2024/04/26
BCP(事業継続計画)対策を徹底解説

災害や緊急事態時であっても、企業は重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための対策を行う必要があります。そのために必要なのがBCP(事業継続計画)です。しかし、実際に策定するためには多くの要素を踏まえた上で、適切な準備が求められます。そこで今回は、BCPの概要から策定に至るまでのポイントについて詳しくまとめました。これからBCP対策に取り組まれる企業様は、ぜひ参考にしてください。

BCP(事業継続計画)対策とは?

BCPとはBusiness Continuity Planの頭文字をとった略称であり、災害や緊急事態における企業の事業継続計画を指す言葉です。大地震や台風等の自然災害、感染症のまん延、大事故、テロ等の事件といった、あらゆる不測の事態において、事業継続や迅速な事業復旧実現を目的としています。日本では2005年に内閣府が「事業継続ガイドライン(第一版)」を発表。定期的な改訂を通じ、企業のBCP策定を推奨しています。

BCP及びBCMの必要性

BCPと関係が深い言葉として、BCM(Business Continuity Management)があります。BCMは、BCP策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、教育・訓練の実施、点検など平常時からのマネジメント活動を指す言葉であり、経営レベルの戦略的活動として位置付けられるものとされています。

BCMの目的は、身体・生命の安全確保に加え、優先的に継続・復旧すべき重要業務の継続または早期復旧することにあります。そのため、災害や緊急事態に従業員の安否確認や被災者の救助・支援に加え、経営及び利害関係者への影響を許容範囲内に抑え、事業の継続を確保することが重要視されます。

【出典】:事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応- (令和5年3月 内閣府 防災担当)

BCPの策定やBCMの取り組みは、取引先からの評価向上や競争力の強化もつながります。例えば、災害時や緊急時に製品・サービス等の供給が期待できることなどが、新規顧客の獲得や取引拡大につながる可能性もあります。

さらに、BCP及びBCMはCSR(企業の社会的責任)の実践とも密接に関連しています。企業が単に利益追求に留まらず、社会に対する責任を果たす姿勢としてBCPを展開することが、企業の社会的評価を高めることにつながるのです。たとえば、地域社会への貢献として再エネ設備を非常用電源として提供するなどの取り組みがこれにあたります。

このように、BCP及びBCMは従業員の安全確保、事業の継続性保持、企業価値の向上、そして社会に対する責任の実践という複数の重要な目的を果たすための不可欠な戦略です。

BCPが注目を集めたきっかけ

BCPの重要性に対する認識は、2001年のアメリカの多発テロ事件をきっかけに全世界で高まりました。日本においては、以下の主要な出来事がBCP対策の必要性と認識の変化に影響を与えています。


東日本大震災

2011年に発生したこの災害は、日本でBCP対策の注目度を大きく高め、多くの企業とその取引先が影響を受けました。

集中豪雨・台風被害

2018年の西日本豪雨や2019年の台風15号・台風19号などをきっかけに、地震だけでなく水害や他の自然災害に対するBCP対策への関心が高まりました。

新型コロナウイルス

自然災害に対する対策強化の中、2020年からはじまった新型コロナウイルスの流行が新たなリスクとして現れ、感染症に対するBCPの重要性が注目されるようになりました。

BCP・BCMと防災活動との関係

BCP・BCMと防災活動との関係

上述したBCM・BCPの目的と比較し、企業の防災活動とは、身体・生命の安全確保や物的被害の軽減を目的とすると考えられています。また、事業所等の拠点毎に検討される点も特徴であり、BCM・BCPと共通する部分も多く企業経営の観点から極めて重要であることから、BCMと並行して推進すべきと考えられています。

【出典】:事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応- (令和5年3月 内閣府 防災担当)

企業のBCP対策の現状

2022年5月の帝国データバンクによる調査によると、事業継続計画(BCP)を策定している企業は全体の17.7%でした。とくに中小企業の対策は14.7%にとどまっており、普及が進んでいない状況が示されています。

調査のなかで、もっとも懸念されるリスクは自然災害でした(71.0%)。なお、感染症のリスクは前年から減少していますが、情報セキュリティ上のリスクや物流の混乱、戦争やテロへの懸念は増加しています。

また、BCPを策定していない理由としては、「策定に必要なスキル・ノウハウがない」が42.7%でもっとも多く、「策定する人材を確保できない」が31.1%と続いています。これらの結果から、中小企業はBCP対策の必要性を認識しながらも、実際の策定においてスキルやリソースの問題に直面している状況が伺えます。

【出典】:株式会社帝国データバンク 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2022 年)

BCP策定における分析と検討

BCP策定における分析と検討

事業影響度分析

非常事態発生後に迅速に事業を復旧し、顧客の要求に応えることは重要です。そのため、重要な事業に必要不可欠な業務を優先順位付けし、継続または早期復旧することが求められます。このように、重要業務の選定、取引先ニーズを踏まえた目標復旧時間等の検討、その実現のために必要な経営資源の特定などの分析や検討を行うことを事業影響度分析(Business Impact Analysis、 BIA)と呼びます。

リスクの分析・評価

また、それと並行し、自社が優先的に対応するべきリスクを把握するための分析・評価も重要となります。この分析・評価は次のようなステップで行うことが望ましいとされています。

  1. ・発生事象の洗い出し
  2. ・リスクマッピング
  3. ・対応の対象となる発生事象によるリスクの詳細分析

事業継続戦略・対策の検討と決定

事業継続戦略とその実現のための対策は、自社の経営理念やビジョンなどを十分に踏まえ、経営全般と連関のとれたものとして経営者として決定することが重要です。事業継続戦略の実現のためには、平常時から一定の費用をかけなければならないケースもあり、経営者としてどこまでの費用をかけるかの判断が求める一方で、これらの対策によって緊急時の対応が可能となり、取引先からの評価や取引の拡大、新規顧客の獲得などにもつながる可能性があります。

事業継続戦略や対策を正式に決定した際、今後の継続的改善を行うことを念頭に決定に至った根拠、経過の資料、選択理由等について記録し保持しておくことも重要です。

BCP策定時のポイント

BCP策定時のポイント

企業がBCP・BCMを検討する上で重要な観点としては次のようなものが挙げられます。


  1. 1.重要製品・サービスの供給継続・早期復旧
  2. 2.企業・組織の中枢機能の確保
  3. 3.情報及び情報システムの維持
  4. 4.資金確保
  5. 5.法規制等への対応
  6. 6.行政・社会インフラ事業者の取組との整合性の確保

チェックしておきたいガイドライン

BCPの策定前や策定時には、政府等から発行されている以下のガイドラインが役に立ちます。

内閣府:事業継続ガイドライン

令和5年3月に改訂された内閣府が発行するガイドラインです。事業継続計画(BCP)を含めた事業継続マネジメント(BCM)の概要、必要性、有効性、実施方法、策定方法、留意事項等が示されているため、BCP策定の出発点として役立ちます。

【出典】:事業継続ガイドライン -あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応- (令和5年3月 内閣府 防災担当)

中小企業庁:中小企業BCP策定運用指針

中小企業向けのBCP策定サポートとしてウェブサイトで公開されている指針です。BCP取組状況チェックを通じて現在の状況診断が可能です。策定にあたっては、中小企業が投入できる時間と労力に応じて「入門」から「上級」までの4つのコースに分かれています。

厚生労働省:新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン


障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドラインです。事業所内で新型コロナウイルス感染症が発生した場合の対応、それらを踏まえて平時から準備・検討しておくべきことが業務継続ガイドラインとして整理されています。

【出典】:障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 令和2年12月)

自家消費型太陽光発電によるBCP対策

太陽光発電設備を自社の事務所や遊休地、駐車場などに設置することは、BCP(事業継続計画)対策として有効です。その理由と、具体的なメリットなどについて解説します。

通信手段の確保

災害時、通信は企業運営の重要な要素です。台風や地震などの自然災害が発生した際、従業員の安否確認や取引先との連絡が不可欠だからです。太陽光発電によって電力が確保されれば、災害時でも通信手段を維持できます。

近年は、災害時に無料Wi-Fiが提供されることが多く、インターネット通話の利用が増加しています。しかしこれも、スマートフォン等のデバイスの充電ができるからこそ利用できるものです。長期停電の際にも通信手段の復旧が早期に進められ、企業運営に重要な情報交換を継続できます。

体調悪化リスクの軽減と照明の確保

災害時でも、空調機器の稼働を保てれば、従業員や施設利用者の体調悪化リスクが軽減されます。

とくに夏場や冬場の停電では、熱中症や低体温症のリスクが高まるため、医療機関や介護施設にとっては重要な対策です。照明設備の稼働は、とくに日が当たりにくい地下や建物内部の安全な避難を確保する上で重要です。

地域への貢献

発電した電力は自社のみならず、地域住民にも提供可能です。災害時にスマートフォンやPCの充電が困難になるため、地域住民が事務所に集まり電力を利用することは、地域社会への大きな貢献となります。

また、太陽光発電設備は企業の社会的責任(CSR)活動としても評価され、企業イメージの向上に寄与します。

【参考】:【法人向け】自家消費型太陽光発電システムとは?基礎知識や導入のメリットなど解説

太陽光発電設置に活用できる補助金

BCP対策として太陽光発電を導入する際、補助金を受けることが可能です。

環境省の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」では、太陽光発電と蓄電池の併設が条件で、対象企業は1kWあたり4万円から5万円の補助を受けられます。

また、「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共施設への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」では、公共施設が対象で、太陽光発電や蓄電池設備にかかる費用の3分の1から2分の1が補助されます。

太陽光発電を用いたBCP対策を検討する際は、これらの補助金制度を利用できるか調べておきましょう。

まとめ

BCP対策は、企業が危機を乗り越える上で重要な施策です。大企業はもちろん、中小企業であっても、早めの策定を行いましょう。万が一の事態というのは、いつ起こるか分かりません。不完全な状態であっても、着実に進めていってください。

なお、自家消費型太陽光発電の設置はBCP対策にも貢献します。もちろん、平時における電気料金の削減といったメリットも見逃せません。

BCP対策をご検討中の方は、ぜひ今回の記事を参考にしてください。

2024/04/26
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