気候変動枠組条約(UNFCCC)
「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」には「共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力」という原則があり、先進国と途上国の取扱いには以下のような区別があります。
・附属書I国:温室効果ガス削減目標に言及のある国
・非附属書I国:温室効果ガス削減目標に言及のない途上国
・附属書II国:非附属書I国が条約上の義務を履行するため資金協力を行う義務のある国
附属書I国の多くは先進国ですが「市場経済移行国」と呼ばれる国々も含まれています。一方で、いわゆる発展途上国は「非附属書締約国」と呼ばれ、附属書締約国の約4倍の国々が存在しています。
また気候変動枠組条約は、後述する「京都議定書」(2020年まで)及び「パリ協定」(2020年以降)を具体的枠組みに持つ国際的な環境条約であることも特徴の一つです。
【出典】:あらためて振り返る、「COP26」(前編)~「COP」ってそもそもどんな会議?(経済産業省 資源エネルギー庁)
過去に開催された代表的なCOP
過去に開催されたCOPの内容について振り返っていきましょう。
COP3:京都議定書(1997年)
1997年に開催された京都会議(COP3)では「京都議定書」という国際条約が採択されました。京都議定書では、先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標が各国毎に初めて設定されました。また、二酸化炭素、メタン、一酸化炭素など6種類の温室効果ガスを対象に1990年を基準年として(HFCs、PFCs、SF6については、1995年としてもよい)、2008年から2012年までの目標達成期間にEU 8%、アメリカ* 7%、日本 6%を削減する目標が設定されました。
*アメリカは未締結
なお、問題点もいくつか指摘されています。先進国に数値目標を義務付ける一方、途上国には新たな義務が導入されなかったことが批判されました。例えば中国やインドなどの二酸化炭素排出量の多い国が数値目標の拘束を受けず、不公平だとの指摘がありました。
しかしながら、気候変動対策の必要性が世界的に認識され、この対策に向けたあらゆる技術や製品の開発につながったことからも、京都議定書の果たした役割は大きいものでした。
COP21:パリ協定(2015年)
2015年に開催されたパリ会議(COP21)では、京都議定書に代わる2020年以降の新たな枠組みであるパリ協定が採択されました。その中では、以下のような世界共通の長期目標が掲げられています。
- 世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
- そのため、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
パリ協定は、先進国だけでなく途上国を含む全ての参加国に排出削減の努力を求める枠組みであることが最も画期的な内容だと評価されています。また、京都議定書が先進国のみにトップダウンで排出削減目標を課す手法であったのに対し、パリ協定では、各国の自主的な取り組みを促す手法が採用されたことも画期的なことでした。このボトムアップのアプローチは日本が提唱してきたものです。
日本政府はパリ協定の枠組みを受け、2030年までに2013年度比で26%の二酸化炭素削減を目標に掲げました。各国が自主的に定めた目標は基準年度や指標が異なりますが、これらの指標を合わせて比較すると、日本の設定目標はかなり高いものでした。また、日本政府はその後さらなる高みであるカーボンニュートラル宣言を行いました。こうした動きを受け、日本では国家レベルでの温室効果ガスの削減とカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速することになりました。
【参考】:「カーボンニュートラル」とは?仕組みや国内の取り組みを紹介
【出典】:今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~(経済産業省 資源エネルギー庁)
COP26:グラスゴー会議(2021年)
2021年11月13日にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26は、グラスゴー気候合意を採択して終了しました。主な内容は以下の通りです。
- 2100年までに世界の平均気温上昇を産業革命以前の水準から1.5℃以内に抑えることを目指す
- 石炭火力発電について段階的な削減を行う
- 全ての国は自身の排出目標を再検討し、強化することが求められる
- パリ協定の実施指針(ルールブック)に合意する
このようにグラスゴー気候合意は、より厳しい気候変動対策の目標や、その実施に向けた具体的な取り組みを定める重要な合意となりました。
日本政府の動きとしては、次の5年間で最大100億ドルの追加資金を提供してアジア等の脱炭素化を支援することを発表。さらに、発展途上国が気候変動に対応する「適応策」の資金援助を倍増し、アジアにおけるゼロエミッション火力への転換を支援すると述べました。その他、温室効果ガスの排出削減を行った量を「クレジット」として国際的に移転する仕組み「市場メカニズム」の実施指針に関して、日本が積極的に交渉参加した結果、日本が提案していた温室効果ガス削減量の二重計上防止策がルールに反映されるなど、大きな貢献を果たしました。
【2022年】COP27:シャルム・エル・シェイク会議
2022年11月6日~11月20日、エジプトのシャルム・エル・シェイクで国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)が開催されました。バイデン米大統領、マクロン仏大統領を含む約100カ国の首脳や大臣が参加。日本からは西村環境大臣が参加しています。
主な結果は以下の通りです。
- パリ協定の1.5℃目標の重要性の再確認
- 2030年国別目標の強化
- 気候変動の悪影響に伴う「ロス&ダメージ」に関する基金設置など
気候変動に脆弱な国への支援を目指すロス&ダメージの基金については、具体的な拠出国や額は未定のまま、COP28での議論に持ち越されることになっています。また、2030年までの各国の温室効果ガス削減のチェック機構として、緩和作業計画が採択されました。その他、二国間クレジット制度(JCM)や日本の具体的な気候変動対策が注目された点もポイントです。とくに、製品製造時の排出量だけでなく、環境配慮製品の普及による社会全体の二酸化炭素削減貢献を評価する新しい価値評価軸、「削減貢献度」のコンセプトが強く発信されました。
まとめ
COPは世界各国が気候変動問題に関して議論し合意形成が行われる重要な場です。上述の通り、これまでの歴史を見ても、各国が異なる事情を踏まえ、多くの議論や交渉を重ねながら世界共通の目標を作り上げてきた軌跡が見えてきます。ここで定めた目標に向かって各国企業や国民それぞれが気候変動対策を進めていくことが求められています。2023年11月30日から行われるCOP28ドバイ会議にも注目が集まります。