電気事業法とは?法内容や種別、2023年改正ポイントなどについて解説! | 法人向け省エネ対策について情報をお届けするサイト
               

公開日2024.01.10

更新日2024.11.19

電気事業法とは?法内容や種別、2023年改正ポイントなどについて解説!

電気事業法とは?法内容や種別、2023年改正ポイントなどについて解説!

電気事業法は、太陽光発電にも関わる法律のひとつです。2023年には改正が行われたため、正しい知識を身につけておきましょう。本記事では、電気事業法の概要や改正内容、太陽光発電導入に関わるポイントについて解説します。

目次

    電気事業法の概要について

    電気事業法の目的とは、「電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図り、並びに公共の安全を確保し、あわせて、環境の保全を図ること」であり、その目的達成のための規制の中心は、「電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめること並びに電気工作物の工事、維持及び運用を規制することにある」とされています。(出典:2020年版電気事業法の解説)

    電気事業法における用語の定義

    上述目的でも言及されている「電気事業」や「電気工作物」等の用語について、電気事業法では以下の通り定義されています。

    ・電気事業

    小売電気事業、一般送配電事業、送電事業、特定送配電事業及び発電事業をいう。(電気事業法 第一章 総則(定義)第二条 十六)

    ・電気事業者

    小売電気事業者、一般送配電事業者、送電事業者、特定送配電事業者及び発電事業者をいう。(電気事業法 第一章 総則(定義)第二条 十七)

    ・電気工作物

    発電、変電、送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物(船舶、車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)をいう。(電気事業法 第一章 総則(定義)第二条 十八)

    【出典】:「2020年度版 電気事業法の解説」(経済産業省)(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/shiryo_joho/electricity_business_act.html)(2023年12月1日に利用)

    電気事業法における電気事業の種別と規制

    電気事業法では、電気事業の種別毎に「登録制」・「届出制」・「許可制」などの規制が定められています。

    届出制

    ・特定送配電事業

    ・発電事業

    ・特定卸供給事業

    許可制

    ・一般送配電事業

    ・送電事業

    ・配電事業

    ・特定供給

    登録制

    ・小売電気事業

    【参考】:託送料金とは?電気料金との関係性などを解説

    電気工作物の種類と保安規制

    電気事業法において、電気工作物とは「発電、変電、送電若しくは配電又は電気の使用のために設置する機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路その他の工作物(船舶、車両又は航空機に設置されるものその他の政令で定めるものを除く。)をいう。」と定義されています。ここで、電気工作物は「一般用電気工作物」と「事業用電気工作物」の2つに大別され、さらに「事業用電気工作物」は「自家用電気工作物」と「小規模事業用電気工作物」に分類されます。それぞれには異なる規制があり、手続き等にも違いがあります。(下図参照)

    一般用電気工作物

    比較的電圧が小さく安全線の高い電気工作物をいい、一般用電気工作物を設置するためには保安規程の届出や主任技術者の選任などが不要であるため、一般家庭等に容易に設置することができる。

    例)一般家庭、商店、コンビニ、小規模事務所等の屋内配線、一般家庭太陽光発電

    事業用電気工作物

    一般用電気工作物以外の電気工作物をいいます。事業用電気工作物を設置するためには、保安規程の届出や主任技術者の選任など安全確保のための措置を取らなければならない。

    例)電力会社や工場などの発電所、変電所、送電線、配電線

    自家用電気工作物

    電気事業※の用に供する事業用電気工作物以外の事業用電気工作物を指す。

    例)自家用発電設備、工場・ビルなどの600Vを超えて受電する需要設備

    ※一般送配電事業、送電事業、配電事業、特定送配電事業、一部の発電事業

    小規模事業用電気工作物

    一部の小規模な発電設備については、保安規程の届出や主任技術者の選任に代えて、基礎情報の届出と使用前自己確認が必要となる。

    例)10kW以上50kW未満の太陽光発電設備、20kW未満の風力発電設備

    【電気工作物の区分】小規模事業用電気工作物 小規模事業用電気工作物2

    【出典】:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/setsubi_hoan.html

    2023年3月の改正による変更点

    2023年3月の改正による変更点

    1964年の公布から、電気事業法は以下の通り改正を重ねてきました。中でも、2013年(平成25年)に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」では、小売全面自由化が2016年(平成28年)実施目処として盛り込まれるなど大きな変革を示すものとなりました。

    電気事業法 沿革

    一 平成7年電気事業法改正(第1次電力構造改革)

    二 平成11年電気事業法改正(第2次電力構造改革)

    三 平成15年電気事業法改正(第3次電力構造改革)

    四 平成20年制度改正(第4次電力構造改革)

    五 平成23年電気事業法改正
     (再生可能エネルギーの固定価格買取制度導入に伴う外生的・固定的なコストの変動に起因する料金改定手続の整備等)

    六 平成25年電気事業法改正(電力システム改革第1段階改正)

    七 平成26年電気事業法改正(電力システム改革第2段階改正)

    八 平成27年電気事業法改正(電力システム改革第3段階改正)

    九 平成29年・平成30年制度改正

    【出典】:「2020年度版 電気事業法の解説」(経済産業省)(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/shiryo_joho/electricity_business_act.html)(2023年12月1日に利用)

    そして直近の2023年改正では、小規模な太陽電池発電設備と風力発電設備に係る保安規制が義務化されました。次項にて具体的な改正内容を解説していきます。

    技術基準適合維持義務の対象が拡大

    技術基準適合維持義務の対象が拡大され、小規模事業用電気工作物(太陽電池発電設備:10kW以上50kW未満、風力発電設備:20kW未満)も、義務の対象となりました。

    基礎情報届出が新設され義務化

    基礎情報届出の制度が新設され、小規模事業用電気工作物(太陽電池発電設備:10kW以上50kW未満、風力発電設備:20kW未満)は、基礎情報の届出が義務となりました。

    ■既設の設備(FIT認定を受けている設備は除く)についても2023年3月20日の施行から6カ月以内(9月19日まで)に届出が必要です。

    ■以下の既設の設備はFIT認定の有無にかかわらず届出が必要となります。

    ①基礎情報の項目に変更があった場合

    ②小規模事業用電気工作物に該当しなくなった場合(廃止を含む)

    【届出事項】

    設置者

    ・住所

    ・氏名又は名称及び代表者の氏名

    ・電話番号、メールアドレスその他の連絡先

    設備

    ・小規模事業用電気工作物の名称

    ・小規模事業用電気工作物の設置の場所

    ・小規模事業用電気工作物の種類

    ・小規模事業用電気工作物の出力

    保安体制

    ・保安監督業務担当者の氏名又は名称(※)

    ・保安監督業務担当者の住所(※)

    ・保安監督業務担当者の電話番号(※)

    ・保安監督業務担当者のメールアドレス(※)

    ・点検の頻度

    ※保安の監督に係る業務を委託して行う場合は、その委託先の情報を記載

    使用前自己確認の対象が拡大され義務化

    使用前自己確認の対象が拡大され、新設する一部の事業用電気工作物(太陽電池発電設備:500~2000kW未満、風力発電設備:20~500kW未満) 及び小規模事業用電気工作物(太陽電池発電設備:10~500kW未満、風力発電設備:20kW未満)は、使用前自己確認が義務となりました。

    既設の設備は対象外ですが、既設設備に以下のような一定の変更の工事を行った場合(特に、パネルの増設等による構造面での変更)には、使用前自己確認結果の届出が必要となります。

    ●太陽電池発電所又は太陽電池発電設備における変更であって次に掲げるもの

    一 出力10kW以上2000kW未満の発電設備の設置
     (5%以上の出力の変更を伴うものに限る。)

    二 発電設備の設置以外の変更であって次に掲げるもの

    (1)出力10kW以上2000kW未満の太陽電池の設置

    (2)出力10kW以上2000kW未満の太陽電池の取替えであって、次に掲げるもの

     イ 支持物の工事を伴うもの

     ロ 5%以上の出力の変更を伴うもの

    (3)出力10kW以上2000kW未満の太陽電池の改造であって次に掲げるもの

     イ 20%以上の電圧の変更を伴うもの

     ロ 5%以上の出力の変更を伴うもの

     ハ 支持物の強度の変更を伴うもの

    (4)出力10kW以上2000kW未満の太陽電池の修理であって、支持物の強度に影響を及ぼすもの

    【出典】:経済産業省ウェブサイト(https://shoushutsuryoku-saiene-hoan.go.jp/

    【2023年改正前後の対応表】【2023年改正前後の対応表】

    【図表】:経済産業省資料に基づきソーラーフロンティアが作成

    電気事業法と太陽光発電における保安

    太陽光発電は、設置容量によって「低圧」「高圧」「特別高圧」の3つに区分されています。

    定格出力電気事業法による区分太陽光発電の区分
    10kW未満一般用電気工作物低圧
    10kW以上50kW未満小規模事業用電気工作物
    50kW以上2,000kW未満事業用電気工作物高圧
    2,000kW以上特別高圧

    上表の通り、低圧は一般用電気工作物、もしくは小規模事業用電気工作物に分類されます。高圧および特別高圧については、電気事業法上は事業用電気工作物に分類されます。また、事業用電気工作物のうち、工場屋根等に設置する自家消費型太陽光発電設備などの電気事業用以外の電気工作物は自家用電気工作物と分類されています。

    また、低圧に比べて高圧にはさらに厳格なルールがあり、導入・運用時にはそれに従わなくてはなりません。主な手続きとしては「保安規程の作成と届出」と「電気主任技術者の選任」です。

    事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。)の保安規制

    電気工作物設置者

    工事・製造の段階

    技術基準適合維持義務(第39条)

    保安規程作成・届出・遵守義務(第42条)

    主任技術者選任義務・職務誠実義務(第43条)

    技術基準の適合性確認(第48条の2)

    工事計画の届出(第48条)

    使用前自主検査実施義務(第51条)

    使用前自己確認実施義務(第51条の2)

    溶接自主検査実施義務(第52条)

    自家用電気工作物(500kW未満の需要設備)については、電気工事士法の対象とし、工事の段階での安全を確保(電気工事士法第5条)

    維持・運用の段階

    技術基準適合維持義務(第39条)

    保安規程作成・届出・遵守義務(第42条)

    主任技術者選任義務・職務誠実義務(第43条)

    自家用電気工作物使用開始届出(第53条)

    定期自主検査実施義務(第55条)

    報告義務(第106条)

    自家用電気工作物(500kW未満の需要設備に限る。)については、電気工事士法の対象とし、工事の段階での安全を確保(電気工事士法第5条)

    【出典】:経済産業省ウェブサイトより抜粋(https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/detail/setsubi_hoan.html

    電気主任技術者の選任

    電気事業法上、設置者は事業用電気工作物を同法に基づく技術基準に適合するように維持する義務を負っていることから、当該事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を監督する者として、電気主任技術者を選任することが義務づけられています。電気主任技術者の選任については、電気事業法や電気事業法施行規則等により定められています。

    ・電気主任技術者による事業場の兼務(兼任)

    昭和39年の電気事業法制定時、設置者に選任された電気主任技術者が複数の事業場を兼務することが可能とされました。また、昭和40年以降、運用の柔軟化が行われ、現在は、高圧以下かつ2,000kW未満の事業場を6以内とすることが兼任範囲の目安とされています。

    ・電気主任技術者による事業場の兼務(統括)

    平成25年、設置者による適切な保安業務を行う体制(保安組織)の確保等を要件として、電気主任技術者による複数の事業場の統括に加え、対象設備を、第2種電気主任技術者が扱える範囲(17万V未満)とする運用の柔軟化が行われました。統括する事業場を6以内とすることが統括範囲の目安とされています。

    ・電気主任技術者による設備の兼務(外部委託)

    昭和39年の電気事業法制定時、設置者が電気主任技術者に係る業務を外部の法人又は個人に委託することが可能とされましたが、電気主任技術者が担当する設備について、事業場の種類及び規模に応じ、経産大臣が告示する方法で算定した値が33点未満、設備が高圧以下であることが外部委託を受託する要件とされています。

    【出典】:「電気主任技術者制度について」令和5年3月31日(産業保安グループ 電力安全課)(2023年12月1日に利用)

    まとめ

    太陽光発電設備は、電気工作物に該当します。導入に当たっては、関連法規である電気事業法等の内容を正しく理解し、それを遵守することが求められます。とくに高圧区分の自家消費型太陽光発電の場合には、低圧区分と比較して厳格なルールがあるため、必要な手続きをよく確認するようにしましょう。