グリーントランスフォーメーション(GX)とは、経済産業省 産業技術環境局より発表された基本構想であり、2050年カーボンニュートラルや、2030年の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた、経済社会システム全体の変革を指します。ここで「経済社会システム全体」とあるように、カーボンニュートラルに向けた取り組みを経済成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現を指向する概念であることが特徴です。
GXが注目される理由
前項でお伝えしたとおり、GXが注目を集めるきっかけとなったのは2020年のカーボンニュートラル宣言です。しかし、それ以外にもGXが注目される理由があります。
地球温暖化と気候変動
地球温暖化に伴い、全世界で豪雨災害、干ばつ、竜巻、異常乾燥による広範な森林火災などの異常気象や自然災害が増加しています。これは「食糧供給の不安定化」「住居の危険性向上」といった、人々の生活に影響を及ぼす問題です。さらに、資源枯渇で製品製造が困難になったり、物流の混乱で原材料や製品の輸送が難しくなったりという経済活動に対して大きな影響を与える可能性も考えられます。
これらの問題の解決に向けたひとつの手段として、経済発展と地球環境の保全を同時に進めるGXの推進が、全世界で急がれています。
ESG投資の市場拡大
「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」という3つの要素(ESG)を考慮して企業を評価し、投資先を選ぶESG投資。要素だけを見ても、GXとの深い関わりが伺えます。
世界持続可能投資連合(GSIA)によれば、2018年から2020年の間に主要な5つの市場でESG投資の運用資産は15%増加し、2020年の初めには35.3兆米ドルを達成。さらに、ESG投資の運用額は総運用資産の35.9%を占め、2018年の33.4%から2.5ポイント上昇しています。
ESG投資市場の拡大傾向は今後も続くと予測されています。一方、ESG要素を軽視した企業活動は、将来的に株価の維持や資金調達に影響を与える可能性が考えられます。
GXリーグの概要
2022年2月、GXに積極的に取り組む企業群が、経済社会システム全体の変革のための議論と、新たな市場創造のための実践を行う場として「GXリーグ」が設立されました。GXリーグでは、GXへの挑戦を行う企業が、排出量削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長できる社会(経済と環境および社会の好循環)を目指すものとされています。
GXリーグのコンセプトでは、多くの企業による自発的・能動的な行動(=リーダーシップ)をもって社会をリードすることが目指されています。また、活動主旨として下記の問題意識を取り上げています。
【なぜ始めるのか】
環境投資に対する日本企業の努力を正当に評価する構造が必要。
欧州標準を受け入れるだけでなく、官民連携でのルール形成が重要。
日本から世界に対する市場創造のリーダーシップが求められている。
参考:経済産業省 GXリーグ設立準備公式WEBサイト(https://gx-league.go.jp/)
これらの問題意識のもと、GXリーグでは下記のことが目指されています。
【なにを目指すのか】
企業が世界に貢献するためのリーダーシップの在り方を示す。
GXとイノベーションを両立し、いち早く挑戦・実践した者が、生活者に選ばれ、適切に「儲ける」構造を作る。
企業のGX投資が、金融市場、労働市場、市民社会から応援される仕組みを作る。
参考:経済産業省 GXリーグ設立準備公式WEBサイト(https://gx-league.go.jp/)
また、GXリーグでは「先駆的取組を主導する事業者間での対話を通じた政策形成」という新たな手法へのチャレンジが行われています。
【GXリーグが提供する4つの場】
- ① 自主的な排出権取引の場
- ② 市場ルール形成の場
- ③ ビジネス機会の創造・共有の場
- ④ 参画企業間の交流の場
参考:経済産業省 GXリーグ設立準備公式WEBサイト(https://gx-league.go.jp/)
GXリーグ参画企業に求められる取り組みは?
2022年2月より「GXリーグ基本構想」への賛同企業の募集が開始され、2023年2月時点の報道では、その数は679社にも上っています。参画企業には下記の取り組みを実施することが要件とされています。
GXリーグ参画企業に求められる取り組み
- ① 自社の排出削減の取り組み
- ② サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指した取り組み
- ③ 製品・サービスを通じた市場のグリーン化の推進
自らの排出量削減に向けた取り組みだけではなく、サプライチェーン上流の事業者に対する取り組み支援や、下流の需要家・生活者に対するカーボンフットプリント等の取り組みを通じた、能動的な付加価値の提供・意識醸成が求められています。また、生活者、教育期間、NGO等の市民社会を含めた幅広い主体と共同し、炭素中立型の市場設計を先導する役割が求められていることがポイントです。
参考:2022年2月1日 経済産業省 産業技術環境局 環境経済室「GXリーグ基本構想」
企業がグリーントランスフォーメーション(GX)に取り組むメリット
次に、企業がGXに取り組むことで得られるメリットについても考えてみましょう。
競争力の強化
既にお伝えしたとおり、GXリーグでは『GXとイノベーションを両立し、いち早く移行の挑戦・実践をした者が、生活者に選ばれ、適切に「儲ける」構造を作ること』が目指されています。また、ESG投資運用額の推移を見ても、GXの活動が企業運営に及ぼす影響は大きいと言えます。
企業イメージ向上
現在の消費者のなかには、エコフレンドリーな製品やサービスを評価し、その価値を認識している人も少なくありません。GXの取り組みが企業の環境配慮を示し、企業ブランドの評価を高めると考えられます。また、環境意識の高い企業は、求職者からも良い評価を受ける可能性があり、人材獲得にも有利です。とくに、GX関連の専門知識を持つ人材の確保に役立つでしょう。
コスト削減
GXは、カーボンニュートラルや温室効果ガス排出量の削減を目指しています。企業にとって、これに取り組むことは直接的なコスト削減もつながります。たとえば、工場や自社施設の屋根に太陽光パネルを設置し自家発電を行い、自身で使うエネルギーを賄うことも可能です。エネルギーや資源の価格変動に対するリスクを軽減できます。
まとめ
カーボンニュートラルと経済社会システム全体の変革を目指すGXは、その中心活動であるGXリーグにおいて、企業のカーボンニュートラルに向けた取り組みが正当に評価される構造・ルール・市場の創造を目指すものです。GXへの取り組みは、競争力の強化・企業イメージの向上・コスト削減など多くのメリットがあります。身近な取り組みとして、太陽光発電システムの導入をご検討してみてはいかがでしょうか。