【2022年】太陽光発電の設置義務化について解説!

【2022年】太陽光発電の設置義務化について解説!

ここ数年、「太陽光発電の設置義務化」というワードが、建築業界を中心とした法人・事業者を賑わせています。こちらでは、太陽光発電の設置義務化がいつからはじまるのかや、その具体的な内容、影響について解説します。

目次

    太陽光発電の設置義務はどこで?いつから?

    太陽光発電の設置義務化に関わる地域は、2023年1月時点で以下の2つです。

    1. 東京都

    2. 神奈川県川崎市

    とくに東京都の太陽光発電設置義務化はニュースなどにも取り上げられた経緯もあり、大きな注目を集めています。2022年12月に都議会本会議で環境確保条例の改正案が可決。2025年4月からの施行が決まっており、2023年からは準備・周知期間が設けられました。
    一方、神奈川県川崎市における太陽光発電の設置義務化は、2022年11月に市環境審議会が市長に対して戸建住宅を含む新築建築物に太陽光発電設置の原則義務化を求める答申を提出した段階で、2023年の春頃に施行の有無が決定する予定です。

    太陽光発電の設置に関連する条例

    東京都に先駆けて、太陽光発電に関連する条例を導入している自治体もあります。

    京都府はこれまでにも、延床面積2,000平方メートル以上の特定建物物に対して、太陽光発電等の再エネ設備設置を義務づけています。さらに、2022年4月からは対象を延床面積300平方メートル以上の準特定建築物にまで拡大。また、京都市においても、京都府と足並みを揃える形で同様の設置義務化が定められています。

    そのほかにも、群馬県や福島県大熊町にて、特定の条件に当てはまる建物に再エネ設備設置を義務化した条例が制定されています。また、義務化まではいかないにせよ、太陽光発電を促進するような制度を整えている自治体も増えている傾向にあります。地盤作りが固まれば、その後義務化に進む可能性もあるでしょう。

    設置義務化の詳細な情報

    太陽

    2021年4月から8月までの間に、国土交通省、経済産業省、環境省とで6回行われていた「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」のとりまとめでは、太陽光発電設備の設置について「将来における選択肢の一つ」として公表しています。

    太陽光発電設備のあり方としては、下記内容が記載されています。

    1. 2030年には、新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が設置される

    2. 2050年には、導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギー導入が一般的となる

    国土交通省では、これらを実現させるために、補助の継続や充実、融資・税制の支援等を含めた導入拡大の取り組みが重要であるとしています。

    【出典】:国土交通省「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方の概要」

    東京都における太陽光発電設置義務化

    東京都における太陽光発電設置義務化の目的は、脱炭素化やレジリエンス向上です。都内におけるCO₂排出量の約70%は、建物におけるエネルギー使用が原因であることが分かっています。2050年には建物ストックの約半数が今後新築される建物に置き換わることを踏まえると、現段階から新築の建物に対する対策を推し進めることが重要であるとの見解が示されています。

    ◇対象となる建物と設置義務者

    東京都の太陽光発電義務化の対象となるのは、延べ床面積2,000平方メートル未満の住宅を含む新築の建物です。

    制度の対象者は、都内で一定以上の新築住宅等を提供しているトップランナー等事業者としています。具体的には、都内供給延床面積合計20,000㎡以上のハウスメーカー等で、約50社が該当するとされています。そのため、住宅購入者が太陽光発電に関する手続きを行うことはありません。

    神奈川県川崎市の太陽光発電設置義務化

    神奈川県川崎市では、「(仮称)再エネ義務・支援等総合促進事業」と呼ばれる条例案について議論が行われている段階です。内容は検討中ですが、一定の規模以上の建物に対し、太陽光発電の設置義務を求めるという点では、東京都や京都府と同様になる見込みです。なお、設置義務を負うのは建設業者という点も、同じになる予定です。

    東京都と他地域との条例の違い

    すでにご紹介したとおり、京都府などの義務化対象は延床面積2,000平方メートル以上の建物および、延床面積300平方メートル以上の準特定建築物です。戸建て住宅で当てはまるケースは少なく、実質として事業用の建物などが対象でした。

    一方、東京都の義務化は中小規模の新築建物を対象にしており、ここには戸建て住宅も含まれます。この規模を対象にしているのは全国でも初の試みであり、住宅の脱炭素化およびエネルギー自給自足の取り組みが国民に広まるきっかけにもなるだろうとも言われています。

    太陽光発電の設置義務化による影響

    電卓

    太陽光発電の設置が義務化された際には、大小さまざまな影響が考えられます。ここでは、設置費用やメンテナンスに関するポイントを解説します。

    ◇住宅価格の高騰

    住宅購入者にとってもっとも大きな影響を受けるとされるのが、住宅価格の上昇です。太陽光パネルが設置された住宅を購入すると、設置費用分がプラスされ、新築物件の購入価格が上がることが想定されます。

    このように、住宅購入時の初期費用で金銭的負担はありますが、長い目で見れば経済的メリットがあります。

    東京都が出している参考資料「太陽光パネル設置に関するQ&A」では、4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用が98万円かかるが、補助金を活用すれば最短6年、長くとも10年で回収することができるとされています。そして30年設置し続けた場合、メンテナンス費用を差し引いても119万円~159万円の経済メリットを得られるとされています。

    このほか、リース等を利用して初期費用をゼロにする方法も考えられます。

    【出典】:東京都「太陽光パネル設置に関するQ&A」

    ◇設置後のメンテナンス

    太陽光パネルは、設置後のメンテナンスが必要です。おおよそ3~4年に一度の頻度で実施することで、「発電効率の低下」や「安全性の低下による事故発生リスク」を抑えることができます。

    必要なメンテナンスの内容はそれぞれの環境・設備によりますが、たとえば住宅用であれば数万円が目安となるでしょう。

    20年に一度はパワーコンディショナーの交換も必要です。定期メンテナンスに比べると費用も大きくなるため、こうしたランニングコストも含んだ経済メリットを計算することが必要です。

    【参考】:【法人向け】自家消費型太陽光発電システムとは?基礎知識や導入のメリットなど解説

    【参考】:【2022年】自家消費型太陽光発電の事業性とは?費用対効果の計算方法も解説

    まとめ

    これまで見てきたように太陽光発電の設置義務化は、事業者や消費者にとっても大きな影響を与える制度と言えますが、電気代削減等の経済的メリットをも生み出すものです。脱炭素化の実現に向けては、新築着工数の長期的な推移状況等を踏まえ、大規模のみならず中小規模以下の建築物から出るCO₂排出量を削減することが求められているのです。国内外の脱炭素化の推進状況を踏まえると、今後全国各地へこのような取り組みが波及していくとも予想できるでしょう。

    【参考】:脱炭素化とは?その実現に向けた企業の取り組みを徹底解説!

    【参考】:「カーボンニュートラル」とは?仕組みや国内の取り組みを紹介