卒FITとは?その対象や企業の卒FIT電力の活用事例を紹介

卒FITとは?その対象や企業の卒FIT電力の活用事例を紹介

再生可能エネルギーで発電した電力を、一定期間、固定価格で電力会社が買い取ることを国が義務付ける「FIT制度」。2019年以降は、毎年多くの住宅用発電設備が買取期間満了に伴い卒FITを迎えています。この卒FITとは、何を意味するのでしょうか?

今回の記事では、卒FITの対象や卒FIT後の選択肢、市場動向などについて詳しく解説します。国内外の脱炭素化の流れから、卒FIT電力を組み込んだ各社のビジネスモデルについてもご紹介しますので、卒FITや脱炭素関連の市場動向に関心がおありの場合には、ご一読ください。

目次

    卒FITとは?

    卒FITとは

    卒FITとは何なのか、対象や関連制度などを見ていきましょう。

    ◇卒FITとは

    卒FITとは、FITによる固定価格買取制度の期間が満了した発電設備のことです。
    FIT制度は、再生可能エネルギーの普及拡大を目的として、2012年に日本で導入されました。例えば、2021年度に導入した10kW未満太陽光発電の場合、発電した電力のうち、家庭内で消費されなかった余剰電力を10年間、1kWh当たり19円(税込)で電力会社が買い取ることとなっています。

    参考:資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー

    記事冒頭で「2019年以降は卒FITを迎える住宅用発電設備が多くある」とお伝えしました。「卒FIT」という言葉から、2019年に固定価格買取制度そのものが終わると感じた方もいるかもしれませんが、固定価格買取制度自体が2019年に終了したわけではありません。「太陽光余剰電力買取制度」(固定価格買取制度の前身)が2009年11月に開始されて以降、導入後10年を経過した発電設備が2019年11月より、順次制度の満了を迎えるということです。
    2019年以降も、卒FITの対象となる住宅用発電設備は年々増加しています。

    参考:日本における太陽光発電普及拡大の歴史、FIT制度からFIP制度へ

    ◇FITを卒業する住宅用太陽光発電の推移

    初の卒FIT対象となる太陽光余剰電力買取制度の開始から2019年で10年が経過しました。2019年以降は、卒FITの対象設備が毎年出てくることになります。
    卒FITの対象件数と設備容量は下図のように見込まれます。2023年には累計165万件が卒FIT対象となる見通しです。

    推移グラフ

    グラフ出典:第8回再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会資料

    卒FIT後の主な選択肢

    卒FIT後の主な選択肢

    卒FITの対象者にとって、卒FIT後にはどのような選択肢があるでしょうか。
    主な例をご紹介します。

    1. ①蓄電システムを導入し電気代を削減しつつ万が一の停電に備える
    2. ②新たな売電先を探し契約する

    ◇蓄電システムを導入する

    1. 発電電力の有効活用と電気代削減

    太陽光発電と蓄電システムを組み合わせることで、家庭内で必要な電気を太陽光発電のクリーンな電気で最大限まかなうことができます。日中に発電した電気を蓄電池に貯めて、朝夕に有効活用したり、深夜の安い電気を系統から蓄電池に貯めて使用することで電気代を抑えることも可能です。

    1. 万が一の停電に備える

    停電時には、蓄電池に貯めておいた電気を家庭内の特定の家電に使用することができます。家電の種類や使用可能時間は蓄電池容量や家電の仕様にもよりますが、例えば6.5kWh程度の蓄電池の場合、以下の家電を約19時間使用することができます。

    [使用できる家電の例と消費電力の目安]

    1. 冷蔵庫(50~100W)

    2. テレビ(100~180W)

    3. 照明(50~100W)

    4. スマートフォン充電(5W)

    参考:ソーラーフロンティア 2009年以降に太陽光発電で売電しているお客様へ

    ◇売電先を探し新規に契約する

    FITによる買取期間が満了を迎えても、太陽光発電は引き続き発電することが可能です。売電単価は契約先により異なるので、ライフスタイルに合わせてより良い売電先を探すことが重要です。

    卒FIT電力を活用したビジネス事例

    ここからは、卒FIT電力を活用したビジネス事例を見ていきましょう。

    ◇イオンの事例

    世界各国で大型店舗やスーパーマーケットなどを展開するイオングループでは、CO2削減の取り組みとして「イオン脱炭素ビジョン2050」を掲げています。
    イオン脱炭素ビジョン2050とは、店舗で排出するCO2などの温室効果ガスを2050年までに総量でゼロにするなど脱炭素化社会実現のために取り組むものです。

    その一環として卒FIT電源の調達に向けた取り組みを行なっています。
    具体的な流れは以下のとおりです。

    1. 1.卒FITを迎えた家庭から、電力会社が余剰電力を買い取る
    2. 2.買い取った余剰電力に含まれるCO2排出量ゼロの環境価値をイオンへ提供
    3. 3.提供された電力量に応じて、各社で設定されたWAONポイントをお客様へ贈呈。

    卒FITの余剰電力に含まれる環境価値を利用することで、イオン店舗はCO2排出量の削減ができる仕組みです。

    参考資料:イオン株式会社「再エネ100% 」「RE100」への挑戦

    ◇東京都の事例

    東京都は、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする取り組みとして「ゼロエミッション東京」を掲げています。そして、2030年までに都が所有する施設で利用する電力を、再生可能エネルギー100%の電力にするという目標を立てています。

    これに向けて、家庭の卒FIT電力を含む「再生可能エネルギー100%の電力」を都立特別支援学校や廃棄物埋立管理事務所といった都有施設で活用する「とちょう電力プラン」を実施しています。

    参考HP:家庭の太陽光余剰電力を東京都へ 卒FIT電力の募集を開始!

    まとめ

    FIT制度の買取期間が満了した発電設備・卒FITは、2019年以降ますます増えていくことが予想されています。買取期間満了後のおもな選択肢は、新たな売電先を探し契約をする・蓄電システムを導入し太陽光で発電した電力を家庭内で有効活用することです。

    近年は再生可能エネルギー活用への注目が集まり、企業や自治体による脱炭素化へ向けた取り組みも活発になってきています。そのため、卒FIT電力を絡めたビジネスモデルも増えていくことでしょう。