再エネ黎明期~FIT制度導入と日本の関連政策
◇日本の再エネ黎明期
日本における本格的な再エネ導入の契機は、1974年、国家プロジェクトとしてスタートした「サンシャイン計画」(1993年「ニューサンシャイン計画」に改組)と言われています。「サンシャイン計画」では、枯渇しないクリーンなエネルギーの技術開発が目標に掲げられ、太陽光発電、地熱発電、水素エネルギー等が対象になりました。その後、太陽電池製造のコスト削減のための技術開発や普及促進のための融資支援制度など太陽光発電の普及拡大を目的とした施策が産官学の連携の下で実施されていきました。
1990年代には、地球温暖化問題がクローズアップされたことから、代替エネルギーや省エネに関する取り組みが温室効果ガス削減に有効であることも着目され、エネルギー枯渇問題に加え地球環境保護という目標が意識されるようになりました。また、太陽光発電を設置する住宅への補助金交付などの支援制度により、一般家庭での太陽光発電の導入が増加していきました。
参考文献:資源エネルギー庁 スペシャルコンテンツ
『資源エネルギー庁がお答えします!~再エネについてよくある3つの質問』
◇FIT制度の導入背景
再エネ利用の更なる普及拡大に向け、2009年には電力会社に対し、太陽光発電の余剰電力の買い取りが義務付けられることになりました。買い取りにかかるコストを電気料金に上乗せすることで、全国民参加型で低炭素社会の実現が目指されることとなりました。
さらに、風力、水力、地熱、バイオマスなど、太陽光発電以外の様々な再エネ普及拡大を支援する目的で、2012年に「固定価格買取(FIT)制度」が日本で導入されました。
FIT制度により太陽光発電の導入量は急拡大し、FIT開始前の約5GWに対し、開始後の2017年には約39GWもの累積導入量に至りました。FIT制度の導入は、それまでの中心であった住宅用システム市場から、メガソーラーなど大規模発電事業という新たな市場の誕生にも寄与しました。
気候変動対策の新たな枠組み「パリ協定」
◇「パリ協定」とは
パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。2015年に行なわれた「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」で採択され、気候変動対策に向けた世界共通の目標が設定されました。
参考:脱炭素化とは?その実現に向けた企業の取り組みを徹底解説!
◇日本の削減目標
日本政府も、2020年10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」を表明していますが、2050年目標達成に向けた中間目標として、2030年度には2013年度比で温室効果ガスの排出量を46%削減しさらに50%削減の高みに向けて挑戦を続けることを表明しています。
カーボンニュートラル実現のための再生可能エネルギーの更なる拡大
再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出しないエネルギーのため、気候変動対策や脱炭素社会の構築に寄与します。また、他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比較し低水準である日本のエネルギー自給率を改善することにもつながるのです。2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画では、2050年カーボンニュートラルに向けた再エネの主力電源化が盛り込まれましたが、その推進のためには、発電コスト低減や需給バランスの崩れによる大規模な停電などの発生を防ぐための電力システム全体の改革など、解決すべき課題が多いことも事実です。
FIP制度の導入
2050年カーボンニュートラルに向け、再エネを主力電源化させ、自立したエネルギー源とするため、2020年6月に「FIP制度」の追加導入が決定されました。制度開始は2022年4月からですが、制度背景や要点を理解しておきましょう。
◇FIP制度の背景
先述の通り、FIT制度の導入により再エネの大幅な普及拡大が進みましたが、その一方で「再エネ賦課金」による国民負担の増大という課題が生じています。「再エネ賦課金」は、FIT制度に基づく買取費用の一部を、電気料金を通じて国民が負担する費用であり、2021年度の見込みでは、その総額は2.7兆円にも及んでいます。今後さらなる普及拡大を進めていくには、こうした国民負担をできるだけ抑えていくことが望ましいとされています。
そこで、国民負担を抑制しながら再エネを自立化させ、さらに最大限導入していくための制度として「FIP制度」が定められました。FIPとは、「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略称であり、電力市場で取引した分に対して一定の補助額(プレミアム)を上乗せする方法です。再エネ導入が進んでいる欧州では既に導入されています。
◇FIP制度で期待されること
FIP制度は、これまでFIT制度の中では市場価格とは無関係であった発電事業から、再エネの自立電源化へのステップとして電力市場への統合を促す途中経過に位置付けられています。
FIP制度の下では、電力需要の高い時期に電気を販売し、需要が少ない時期には売電を控えるというインセンティブが確保されることや、発電事業者が市場に調和的な行動をとることにより電力システム全体の運営コストが下がることが期待されています。
また、需要家の発掘や蓄電池併用などの新たなビジネス促進やシステムの最適化が図られ、他電源と共通の環境下で競争が行われ自立化することも期待されています。
図出典:資源エネルギー庁 なっとく再生可能エネルギー
参考文献:資源エネルギー庁 スペシャルコンテンツ
まとめ
今回の記事では、太陽光発電普及拡大の歴史やパリ協定を契機としたカーボンニュートラルの流れの中で、再エネがどのように制度化され、今後どのような方向に向かっていくのかを記載しました。
脱炭素推進を目指す企業にとって、すぐに検討が可能な取り組みは以下の記事からも確認できます。ぜひご活用ください。