温室効果ガス排出量の現状と脱炭素化
脱炭素化とは、温室効果ガスである二酸化炭素の排出を実質ゼロにすることです。
温室効果ガスの種類には、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガス等がありますが、排出量として特に大きな割合を占めるのが、燃料の燃焼や、供給された電気や熱の使用にともなって排出される「エネルギー起源の二酸化炭素」です。その構成比は温室効果ガス排出量全体の85%程度です。
事業活動を含む私たちの生活において、電気やガスなどのエネルギーは不可欠なものですが、そのエネルギーを作り出すため、燃焼時に大量の二酸化炭素を排出する石油や天然ガス、石炭などの化石燃料が使われています。
これらのエネルギー源を二酸化炭素の排出を伴わないエネルギー源に変換することで、社会全体の二酸化炭素排出量を抑制することができます。さらに、吸収や除去といった技術開発を発展させることにより、排出した二酸化炭素を実質ゼロとするカーボンニュートラルの状態、脱炭素化社会が実現できます。
参考:「カーボンニュートラル」とは?仕組みや国内の取り組みを紹介
参考:資源エネルギー庁 「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点
参考:資源エネルギー庁 「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?
◇脱炭素化の動きが加速したきっかけ
脱炭素化へ向けた活動が本格的に動き始めたのは、2015年に行なわれた「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」がきっかけです。
COP21では、気候変動問題の国際的な取決めである「パリ協定」が採択され、次の内容が世界共通の目標として掲げられました。
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世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする
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そのために、できる限り早急に温室効果ガスの排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガスの排出量と森林などによる吸収量のバランスをとる
パリ協定には、190以上の国・地域(※途上国を含む)が参加しており、5年ごとに各国で地球温暖化対策の目標を策定・提出し、対策に取り組んでいる状況です。
2021年10月にイギリスで開かれたCOP26では、世界各国の首脳が参加する中、パリ協定の主旨である世界の平均気温の上昇を「2度より充分低く保ち、1.5度に抑える努力を追求する」ことが改めて合意されたことが重要です。
参考:資源エネルギー庁 今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~
参考:外務省 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21),京都議定書第11回締約国会合(CMP11)等
◇脱炭素化のために日本が掲げた目標
日本政府も、2020年10月の臨時国会で「2050年カーボンニュートラル宣言」を表明していますが、この宣言を達成し、地球の気候変動を食い止めるためには、法人・個人・国・自治体を問わず、あらゆる立場での取り組みが必要となります。これは、エネルギー起源で排出される二酸化炭素のうち70%以上が産業・運輸・業務等の部門で排出されている実情を見ても明らかなことです。
なお、2050年目標達成に向けた中間目標として、2030年度には2013年度比で温室効果ガスの排出量を46%削減しさらに50%削減の高みに向けて挑戦を続けることを表明しています。
参考:環境省 2019年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について
脱炭素化を推進する国内外の枠組み
脱炭素化を推進する国内外の枠組みとして代表的なものが、次の4つです。
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TCFD
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SBT
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RE100
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RE アクション
それぞれの枠組みを解説します。
◇TCFD
TCFD(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures)とは、企業の気候変動への取り組みや影響に関する情報を開示する枠組みです。具体的には、気候変動のリスクをどのように特定・評価・低減しているか、どのような体制でリスクを分析し経営に反映しているか、などの情報開示が求められます。
◇SBT
SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定が求める水準に合致した企業の中長期的な目標設定を促す枠組みです。SBT参加企業は、5~15年先を目標年として温室効果ガスの排出量削減目標を設定します。なお、設定する目標は、最新の気象科学に基づく内容でなければなりません。
◇RE100
RE100(100% Renewable Electricity)とは、企業が事業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギー由来のものにすることを目指す国際イニシアティブです。ただし、次に紹介する「REアクション」と異なり、RE100に加盟するには国際的・地域的な影響力が求められるため、大企業向けの取り組みといえます。
RE100についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
参考:RE100とは?加盟のメリットや企業事例を詳しく解説
◇「再エネ100宣言RE Action」
再エネ100宣言 RE Actionとは、企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再エネ100%利用を促進する新たな枠組みです。中小企業版RE100のような枠組みとして、日本独自に発足しています。
「再エネ100宣言RE Action」 についての詳しい説明は、以下の記事をご覧ください。
参考:再エネ100宣言RE Action(アールイー・アクション)とは?参加条件やメリット、企業の再エネ導入事例を紹介
脱炭素化の実現に向けた企業の取り組み
省脱炭素化の実現に向けて、企業にはどのような取り組みが可能なのでしょうか。その代表例をご紹介します。
◇自家消費型の太陽光発電システムを導入する
自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電システムで発電した電気を自社設備で使用することをいいます。太陽光発電では太陽光のエネルギーを使って発電するため、二酸化炭素の排出量を大幅に削減することが可能です。
一般的に、化石燃料を使用した火力発電では1kWhに対して約690g-CO2/kWh のCO2が排出されます。一方、太陽光発電のCO2の排出量は17~48g-CO2/kWh とかなり少なく、自家発電に切り替えればおよそ650g-CO2/kWh のCO2を削減できます。
参考:クール・ネット東京 東京都地球温暖化防止活動推進センター
また、自家消費型の太陽光発電システムを導入すれば、自家消費分の電気は無料で利用できるため、事業に使用する電力のランニングコストを大幅に下げることも期待できるでしょう。
また、近年「ESG投資」が世界的に広がっています。
ESG投資は、従来の財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のことを指します。気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会を評価するベンチマークとして、SDGS(国連持続可能な開発目標)と合わせて注目されています。
太陽光発電システムを導入し脱炭素化に貢献することは、ESG投資の考え方に合致する部分が多く、投資家からの評価を獲得できる可能性が高まります。
◇二酸化炭素排出量の少ない電気を買う(電力契約の切り替え)
設備投資などの初期費用をかけず、小売電気事業者から二酸化炭素排出量の少ない電気を購入する方法もあります。一般的な電気料金と比較し割高になるケースもありますが、事業活動で使用する電気を排出量の少ない電気に切り替えることで脱炭素化の貢献になります。
◇省エネの推進
企業活動で発生する二酸化炭素の排出量をそもそも削減する活動(省エネ)も重要です。企業の省エネ対策としては、高効率設備への交換、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入、設備のメンテナンス実施などが代表例として挙げられます。どういった対策が自社に適しているのか、費用対効果の高い対策は何かといった助言や支援が欲しい場合などは、省エネ診断を受診することがおすすめです。 省エネ診断とは、エネルギーのプロが電気の使用状況や稼働設備を分析し、省エネに向けた改善策を提案してくれるサービスです。「省エネを実現したいものの方法がわからない」という方は、まずは省エネ診断から始めることが脱炭素化の一歩となります。
省エネ診断サービスについて、詳しくは こちら のページをご覧ください。
まとめ
脱炭素化とは、温室効果ガスの排出を抑止し、排出量を実質ゼロにすることです。2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにする目標に向けて、企業も脱炭素化の取り組みを促進する必要があります。
本記事では、企業ができる取り組みとして、自家消費型太陽光発電システムの導入や電力契約の切り替え、省エネの推進等を紹介しました。脱炭素化の実現に向けて、自家消費型太陽光発電システムの導入に興味がある方は、以下の記事も併せてご覧ください。
参考:【法人向け】自家消費型太陽光発電システムとは?基礎知識や導入のメリットなど解説
参考:【法人向け】PPAモデル(第三者所有型)とは?導入のメリット・デメリット、徹底解説!