「脱炭素」「カーボンニュートラル」などの用語が身近になった近年、自家消費型太陽光発電を導入する企業が増えています。
【参考】:脱炭素化とは?その実現に向けた企業の取り組みを徹底解説!
実際に自社に導入する場合、コストや効果等の事業性を確認した上で検討しなければいけません。このような導入検討時期の疑問点を解消するため、本記事では知っておきたい自家消費型太陽光発電の基礎知識、費用対効果の考え方や計算例について解説致します。本記事の内容が、事業性を確認する際の参考となれば幸いです。
自家消費型太陽光の基礎知識
自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電によって生み出された電力を優先的に自社施設で消費するモデルのことを指します。自家消費で賄えない分だけを電力会社から購入するため、自家消費分の電気料金がかからないことが特徴です。
自家消費型太陽光への関心が高まっている背景としては、以下の2つが挙げられます。
1.再生可能エネルギー電力が有する環境価値への関心
再生可能エネルギーの生み出す電力は、火力発電等と比較し発電過程においてCO2を排出しないため、クリーンな電力と呼ぶことができます。そのため、事業活動で必要な電力の一部を太陽光発電の電力で賄うことで、自社のCO2排出量を削減することができます。このようなCO2を排出しない電力は、「環境価値」がある電力と見做されます。近年では「脱炭素化」や「カーボンニュートラル」の流れを受けて、サプライチェーン全体でCO2排出量の削減が要請される動きも出てきています。CO2排出量を削減する手段として、企業各社の関心が環境価値を有する電力へシフトしているとも言えます。
ここで、同じく再生可能エネルギーで作られた電力であるFIT電力では、どうなるでしょう。FIT(固定価格買取制度)によって電力会社が買い取った電力にも環境価値がありますが、この権利は国民に帰属するとされています。これはFIT電力の買取費用の一部が再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)という形で国民負担によって賄われているためです。また、再エネ賦課金の価格は2012年から10年間で約16倍にまで膨らんでおり、需要家の電気料金を圧迫している状況です。
2.電気料金の高騰
再エネ賦課金による圧迫に加え、昨今では燃料価格の大幅な上昇や電力需給のひっ迫を受け、電気料金は高騰を続けている状況です。これは、自家消費型太陽光発電の設置により得られる電力のコストを上回る水準となっています※。また、契約先である電力小売事業者の倒産や撤退により、電力の調達リスクを抱える企業が増加する事態となりました。このように、電力コストや調達リスクの両側面から、自家消費型太陽光の導入を検討する企業が増えているのです。
※試算上の一例であり、案件により傾向は異なります。
導入検討の際は費用対効果をチェック
実際に自家消費型太陽光発電を導入する場合、どのような費用と効果が発生するのでしょうか。それぞれ整理して、事業性を考えていきます。
◇費用
一般的に太陽光発電の導入費用は、設置にかかる初期費用と設置後のメンテナンス費用にわかれます。初期費用の算出には現地調査が必要です。この際、設置環境や設置形態によっても内容や金額が異なるため、必要な機器や工事内容を確認の上で、費用を算定する必要があります。また、太陽光発電システムを長期安定的に利用するためには、継続的なメンテナンスが欠かせません。標準的なメンテナンス項目としては、発電設備の遠隔監視や定期点検、機器やシステムに不具合があった際、現地での迅速な確認を依頼できる駆け付け対応といったサービスがあります。万が一の不具合による損失を最小化できるよう、導入初期段階からメンテナンス体制を整えておくことが重要です。
◇効果
導入効果として主要なものは、電気料金とCO2排出量の削減です。電気料金はもちろんのこと、CO2排出量削減効果も年間推定発電量などをもとに定量的に算出することができます。
費用対効果はどのような計算で求められる?
費用対効果を考える際は費用と効果を定量的に比較し、導入後の事業性を確認することがポイントです。
◇費用の算出例
経済産業省は調達価格等算定委員会を設置し、年度ごとに太陽光発電のコストに関する実績データの調査を行っています。今回は最新版である「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」内の数値も参考にしながら、概算の計算方法をご紹介します。
1.初期費用
設置費用は、2012年から低減傾向にあり、250-500kWの容量帯において、2021年度の平均値は1kWあたり17.2万円でした(下記図参照※1)。
※1 出典: 調達価格等算定委員会「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」 (P10)をもとに計算式を作成。
2.メンテナンス費用
メンテナンス費用には保守点検費、修繕費、人件費などが含まれています(※3)。実際には、設置容量や設置形態、作業項目によっても費用が異なりますので、設置費用の見積を取得する際に合わせて確認するようにしましょう。
※2 出典: 調達価格等算定委員会「令和4年度以降の調達価格等に関する意見」 (P14〜P15)をもとに計算式を作成。
※3 出典: JPEA代行申請センター 「10㎾以上 運転費用報告 記入例」 (P3)より抜粋。
◇効果の算出例
効果を定量的に把握するためには、まず年間推定発電量を算出する必要があります。
発電量は設置場所や設置条件、機器の仕様によって異なりますが、見積と合わせてメーカーや施工会社へ依頼することが可能です。ここでは、一例として、510kWの太陽光発電システムを設置したときの概算効果を解説していきます。
年間推定発電量:580,443 kWh
【算出条件】
・方式:JIS C 8907
・日射量データ:METPV-20
・気象サイト:東京
・パネル型式/ 枚数:SFA380-120A / 1,344 枚
・PCS 変換効率:95%
・過積載率:130%
・設置方位/ 角度:真南/ 2.86 度
・設置方法:屋根置き
※記載地域における気象データを元に、ソーラーフロンティアの計算方法に基づき発電量を推定したものであり、お客様のシステムの発電量を保証するものではありません。
1.電気料金削減額
年間推定発電量×95%×(電気料金単価+再エネ賦課金)
例:580,443kWh × 95% × (15.66 円/kWh + 3.45 円/kWh) = 10,537,652 円/ 年
東京電力 高圧電力(契約電力500kW以上)の2022年8月時点の電力量料金をもとに試算した場合、年間平均単価は15.66円/kWh、再エネ賦課金は3.45円/kWhとなります。仮に年間推定発電量の95%を自家消費分として活用できた場合、年間で約1,054万円の電気料金が削減できることになります。
2.CO2削減効果
年間推定発電量(kWh)× 95% × 0.3875kg(※4)-CO₂/kWh
例:580,443 kWh × 95% × 0.3875kg(※4)-CO₂/kWh = 213,676 kg-CO₂/ 年
上述同様、自家消費率を95%とした場合、年間で約213,676kgの削減効果がある計算になります。
※4 出典: 太陽光発電協会 表示ガイドライン(2022年度) 太陽光発電システムのCO2削減効果
そのほかの導入メリット
電気料金やCO2排出量の削減のほかにも、メリットは様々あります。その一部を下記にてご紹介致します。
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企業価値の向上
再生可能エネルギーの活用、脱炭素への取り組みを掲げることで企業価値の向上を図ることができる。
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節税効果(税制優遇)
中小企業等経営強化法に基づく即時償却等や税額控除、固定資産税の軽減措置といった税制の優遇を得ることができる。
【参考】:【太陽光発電】導入時に適用可能な税制措置とは?中小企業等経営強化税制の概要や要件をわかりやすく解説!
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災害時の備え(BCP対策)
停電時に必要な最低限の電力を確保でき、蓄電システムを導入すれば安定した環境で事業を継続できる。
【参考】:産業用蓄電池とは?導入費用やメリット、設置の際の補助金についても解説
【参考】:BCP(事業継続計画)とは?策定のポイントと対策について解説
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土地の有効利用(工場立地法)
工場立地法による環境施設にカウントされるため、緑地を他の用途として活用できる。
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省エネ法・温対法対策
省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)、温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)など報告が義務付けられている場合、対応策として活用できる。
【参考】:省エネ法とは?企業が対応するには太陽光発電が効果的?
また、地域によっては太陽光発電設備の導入に対して補助金を出している自治体もあります。活用を検討されている方は、各自治体にお問い合わせください。
太陽光発電を導入してCO2排出量と電気料金を削減
本記事では、事業性を判断するための計算方法やそのほかの導入メリットについてご紹介しました。しかし、本記事でご紹介した費用対効果の計算方法はあくまで概算用のため、実際に設置を検討する場所や建物を選定の上で、メーカーや施工会社に詳細の見積を依頼しましょう。ソーラーフロンティアでは、太陽光発電の導入検討に必要な様々な支援を実施しています。まずはお気軽にご相談ください。